初恋をもう一度。【完】
辺りは真っ暗で、ベンチの脇にある外灯が頼りなくわたし達を照らす。
車道を走る車の音。
ときどき、前の道を歩く人々が笑い声を上げる。
でもわたし達は公園のベンチで二人きりで、それはまるで、あの放課後の第2音楽室みたいに、切り取られた世界にいる気がした。
「俺、奈々ちゃんにどうしても伝えたいことがあるんだよね」
少しだけ緊張した面持ちで、鈴木くんが言った。
途端に高まった鼓動を落ち着かせるように、わたしは軽く息を逃した。
「……うん、言ってたね」
「あのさ……俺」
彼が言いかけたところで、不意に冷たい風が強く吹き付けた。
「さむ……」
思わず身を縮めると、鈴木くんは「まじ寒いね」と笑って、繋がれていた手を解放した。
「奈々ちゃん、もっかい抱きしめてもいい?」
コクリと頷くと、鈴木くんは照れたように笑って、わたしをぎゅっと抱きしめた。
「少しはあったかい?」
鈴木くんの温かい息が、耳元をくすぐる。
「うん……」
正直、あったかいとか寒いとか、そんなことはよくわからなかった。
幸せ過ぎて、どうにかなりそうで。
「あのね、このまま話してもいい?」
鈴木くんの言葉に、小さく頷いた。