初恋をもう一度。【完】
「こないだもちょっと話したけどさ。俺6年前、奈々ちゃんのこと大好きだったんだよね」
「うん、ありがと……わたしもだよ」
「うん、知ってる」
鈴木くんがくくっと笑って、わたしの顎の下で肩が小さく揺れた。
「あの頃のことは、もちろんすごく大切な思い出だし、切り離して考えることはできない。でも、なんて言えばいいのかな」
なんとなく、彼が言いたいことはわかった。
わたしも同じ気持ちだったから。
「俺は過去じゃなくて、奈々ちゃんと一緒に前を向きたい。だから……」
鈴木くんは背中に回していた手を解放すると、わたしの両肩に手をやって、真っ直ぐにこちらを見つめた。
「……だから?」
「だから」
外灯に照らされた彼の顔はすごく近い。
あどけない印象の顔は、少しだけ伏し目がちになっているせいか、すごく大人びて見えた。
もしかしたらこのままキスされるのかも、そんなことを考えてしまい、勝手に胸が高鳴っていく。
「奈々ちゃん、俺ね」
「……うん」
しかし、鈴木くんが次に放った一言は、わたしが期待していたものとは全然違っていた。
「奈々ちゃんに謝らなきゃいけないことがある」