初恋をもう一度。【完】
鈴木くんは黙ったまま俯いている。
こんなに重い空気になってしまったのは、身内を亡くしたというお葬式の話を口にしてしまったからだろうか。
……いや違う、その前からだ。
鈴木くんは「謝らなきゃ」「ごめんね」「ずっと嘘ついてる」と言った。
彼に手渡された、彼以外の誰かが弾いたCD。
そして、「リト」と呼ばれた鈴木くん。
中1の時から、わたしを好きだった?
幼馴染みのシュンくん。
繋がりそうで繋がらなくて、ただ、嫌な胸騒ぎだけが止まらない。
「奈々ちゃん」
鈴木くんの張り詰めた声が、冷えた闇に落ちた。
「俺に訊きたいこと、いっぱいあるよね?」
彼はこちらを向いて静かに言った。
「……うん」
「あのさ……まず、そのピアノのCD」
「うん」
「その『月光』を弾いてるのは……」
鈴木くんは泣きそうな顔でふにゃりと笑って、
「………………スズキミナト」
掠れそうな声でぼそりと呟いた。