初恋をもう一度。【完】
スズキミナト。
それは鈴木くん自身のフルネームだった。
……なのに、何だろう、この違和感は。
「……鈴木湊人? だって、それって鈴木くんでしょ?」
わたしは、そんな馬鹿みたいなことを聞き返した。
当たり前のことを訊いている。
……なのに、胸がとてもざわざわして、落ち着かないのはどうして。
「…………」
「……鈴木くんは、『鈴木湊人』くんだよね?」
「…………」
鈴木くんは、ゆっくりと、でも確かに、首を横に振った。
「……じゃあ、あなたは、誰?」
初恋の鈴木くんの名前を騙って、わたしに連絡して来たあなたは。
わたしと毎日、 メッセージのやり取りをしていたあなたは。
わたしが恋をしたあなたは。
わたしに会いに来てくれたあなたは。
ねえ、「リト」と呼ばれた目の前のあなたは。
一体、どこの誰ですか?
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