初恋をもう一度。【完】
とりあえず適当に、文房具やら辞書やらをダンボールに詰めた。
それから衣類……そうか、靴も持っていかなきゃいけないのか。
あとは小説とかマンガとか、ゲームも少し持っていこう。
そんな作業を渋々やっていたら、中学2年の頃を思い出した。
栃木の家からこっちに引っ越して来た時のこと。
あの時も荷造りが全然進まなくて、母親に怒られたっけ。
懐かしいな。
俺は栃木市で生まれて、14歳まで栃木市で育った。
建築士の父さんが勤めている建設会社の転勤で、家族みんな東京に引っ越した。
父さんはともかく、音大出身の母さんは、俺が物心ついた時から自宅でピアノ教室を開いていたから、まさか転勤がある家庭だと思わなくて衝撃だった。
転勤の話を父親から聞いた日のことを思い出して、声に出して笑った。
……そういえば、あの日は他にも、びっくりさせられた日だったな。
あの子、元気にしてんのかな。
あの頃を振り返ると、どうしたって『彼女』のことを思い出してしまう。
……思い出してしまう、なんて言い方は変か。
俺は一度だって、忘れたことがない。
田崎奈々ちゃん、俺の初恋の人だ──。
◆◆◆◆◆
それから衣類……そうか、靴も持っていかなきゃいけないのか。
あとは小説とかマンガとか、ゲームも少し持っていこう。
そんな作業を渋々やっていたら、中学2年の頃を思い出した。
栃木の家からこっちに引っ越して来た時のこと。
あの時も荷造りが全然進まなくて、母親に怒られたっけ。
懐かしいな。
俺は栃木市で生まれて、14歳まで栃木市で育った。
建築士の父さんが勤めている建設会社の転勤で、家族みんな東京に引っ越した。
父さんはともかく、音大出身の母さんは、俺が物心ついた時から自宅でピアノ教室を開いていたから、まさか転勤がある家庭だと思わなくて衝撃だった。
転勤の話を父親から聞いた日のことを思い出して、声に出して笑った。
……そういえば、あの日は他にも、びっくりさせられた日だったな。
あの子、元気にしてんのかな。
あの頃を振り返ると、どうしたって『彼女』のことを思い出してしまう。
……思い出してしまう、なんて言い方は変か。
俺は一度だって、忘れたことがない。
田崎奈々ちゃん、俺の初恋の人だ──。
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