初恋をもう一度。【完】
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中学1年、6月某日──。
今日は音楽コンクールで、全校生徒がみんな体育館に集まってる。
音楽コンクールという名称だけど、要するに合唱コンクールだ。
外は朝から地面を舐め回すような鬱陶しい雨で、体育館の中も湿気でムンムンしてる。
そこそこ古い体育館の空調は甘くて、教室や廊下よりも蒸し暑い。
ほんのり汗ばむ顔を手でパタパタと扇いでたら、壇上に生徒会長が姿を見せて、きゅいーんとマイクが大きくハウリングした。
優勝できるように精一杯頑張りましょう、なんて言うけど、合唱なんて何をもってして優勝なんだろう、と不思議に思う。
音楽とか美術とか芸術を評価するのは、きっとすごく難しい。
だって、大いに主観というか好みが入る。
例えば人が10人集まって、俺のピアノと弟のピアノを比べたら、評価は半々くらいに分かれる気がするんだ。
まあ年上の俺の方がちょっとだけ上手いから、俺が6で弟が4かもしれない。
そんな技術的な差で評価するならわかるけど、クラスみんなで歌う歌のレベルなんて、そんな大差ない気がする。
なんて考えてる間に生徒会長の挨拶が終わって、そのあと実行委員からルール説明みたいなものがあってから、コンクールが始まった。