初恋をもう一度。【完】
「あの、恩田くん」

1ヶ月ぶりに聞く、鈴が鳴るような声。

それだけで、心臓が爆発しそうになった。

「ん、なに?」

「……えっと、言い忘れてたんだけどね、4時間目の前に職員室に資料取りに来てって、先生が」

「あー、了解」

「じゃあ、またあとで。……邪魔しちゃってごめんね」

彼女は控えめにそう言って、また席に戻っていった。

「だりー。今日俺、日直なんさー」

「……ねえ恩ちゃん、今の子の名前教えて」

気づいたら、口が勝手にそう言っていた。

「え、今の? 田崎だけど。田崎奈々」

「たさき、ななちゃん……」

あの子、ななちゃんっていうのか。

「つーか湊人、顔すげー赤いんだけど」

「えっ? まじで?」

「あれ、湊人もしかして、田崎のこと好きなん?」

「は? 好き!?」

びっくりして声が裏返ったところでチャイムが鳴って、俺は慌てて2組に戻った。


好き?

俺があの子を、ななちゃんを好き?

…………ああ、そうかもしんない。
< 130 / 210 >

この作品をシェア

pagetop