初恋をもう一度。【完】
5月になって、来月の音楽コンクールの合唱で誰が伴奏するかという話し合いが行われた。

俺がピアノを弾けることは誰にも言ってなくて、知ってるのは恩ちゃんくらい。

別に隠してるわけじゃなくて、「俺ピアノ弾けるよ」なんて言う機会はなかなかないってだけだ。

本当に弾く人がいないってなったら、まあ伴奏くらいやってもいいかなとは思う。

でも、うちのクラスにはピアニストを目指してるすずちゃんがいるから、まあ大丈夫だろう。

そう思ってたのに、すずちゃんが

「私、ピアノのレッスンで忙しいから、そんな暇ないです」

なんて言い出して、みんな困り果ててしまった。

これはいよいよ俺の出番かと思ったら、

「あ、先生。そういえば、田崎さんがピアノ弾けますよ」

すずちゃんが突然、そんなことを言った。
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