初恋をもう一度。【完】
俺達の家は、母さんがピアノ教室を営んでいて、だから俺も兄貴も、物心ついた時からピアノをやらされていた。
兄貴は、ピアノの練習は嫌いだって言ってたけど、そんなピアノですら、やっぱり兄貴の方が断然上手かった。
俺は同じ曲を弾けるようになるのに、毎度兄貴の倍くらい練習が必要だった。
けど、俺はピアノ弾くのが好きだったから、外で遊べないのは嫌だけど、練習自体は別に苦じゃなかったな。
サッカーとピアノどっちが好きかと訊かれたら、兄貴はサッカーって答えるけど、俺はピアノって答える。
もちろんサッカーも好きだけど。
俺達は、顔も趣味も嗜好もとてもよく似ていて、でもそこだけは違ってたと思う。