初恋をもう一度。【完】

開けてみたら、写真何枚かとCD-Rが1枚入っていた。

写真はを見た瞬間、思わず息を飲んだ。

全部中学の頃の写真で……その全てに奈々ちゃんが映っていたから。

奈々ちゃんへの気持ちも兄貴への気持ちもごちゃ混ぜになって、気づいたら俺は泣いていた。

俺の大切な人は、みんな会えなくなってしまう。

CD-Rの中身はその場では聴けなかったけど、家に帰って再生したら、ベートーベンの「月光」だった。

ベートーベンが最愛の人にプレゼントした曲。

その月光を弾いているのは、兄貴だった。

そんなの、聴けばすぐにわかる。

俺が憧れてやまない、才能の塊みたいな演奏。

……それにしても。

俺達はやっぱり、本当にそっくりだね。

全く同じプレゼントをしようとするなんて。

兄貴はヘタれてできなかったみたいだけど。

兄貴の気持ちなんて、この写真とCD―Rだけで充分理解できた。

だって、とっくにただの思い出にできてたなら、わざわざこんな風に箱にしまって、手の届くところに置いたりしない。

兄貴も俺と同じ。

奈々ちゃんのことが忘れられなくて、ずっと会いたかったんだろうな。

ほんと、そっくりな兄弟だね。
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