初恋をもう一度。【完】


◆◆◆◆◆

「俺は、鈴木理人。鈴木湊人の1つ下の弟だよ」

6年越しの真実が、白い吐息に混じってようやく吐き出される。

口に出せば何かから解放されるかと思ったのに、それは傷口を抉るような痛みを伴った。

「……おとうと?」

大きな目をパチパチとさせて首を傾げた奈々ちゃんに、俺はこくりと頷いてみせた。

「りと、くん?」

彼女が初めて、俺の名前を口にした。

「うん、そうだよ」

「…………鈴木くん……鈴木、湊人くんは?」

鈴木くん。

奈々ちゃんにとっての『鈴木くん』が兄貴だということに、今さら胸が苦しくなる。

「ごめんね。俺の兄貴は、鈴木湊人は……もういないんだ」

「いない?」

「うん。夏にね、事故で死んじゃったんだ」
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