初恋をもう一度。【完】

「……ずっと、嘘ついててごめん」

俺は話の最後をそう締めくくった。

こんな一言で済まされる話じゃないのはわかってる。

わかってるけど……。

「……理人くん」

奈々ちゃんの静かな声に、ハッとなる。

もしかしたら俺は、彼女の大切な『鈴木くん』を奪ってしまったんじゃないか。

真実を話したいなんていうのは俺のエゴで、本当は奈々ちゃんのために、俺はずっと嘘をつき続けるべきだったのではないだろうか。

俺自身の名前を呼ばれて嬉しい筈なのに、もう『鈴木くん』と呼ばれないことが、全てを話してしまった俺を今さら迷わせる。

「ごめん。わたし、今日は帰るね」

奈々ちゃんが、すっと立ち上がった。

「……ちょっと、一人になりたい。急にいろんなこと知っちゃったから……」
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