初恋をもう一度。【完】
引き止めることなんてもちろんできない。
「あっ、夜遅いし家まで送るよ」
俺も慌てて立ち上がったものの、
「ううん、すぐ近くだから大丈夫」
奈々ちゃんはゆっくりと首を振って、寒そうな白い頬に少しだけ笑みを浮かべた。
「今日来てくれてありがとう。……あとこれ、湊人くんのピアノ。届けてくれてありがとう」
「あのさ、俺ずっと嘘ついてたけど、奈々ちゃんのことほんとに」
「理人くん」
好きだよ、そう伝えたかったのに。
奈々ちゃんの驚くほど冴え渡った声が、俺の言葉を遮った。
「また連絡するね」
そう言って、奈々ちゃんは歩き出した。
小さな背中が、どんどん遠く離れていく。
後を追うことなんてできなかった。
覚悟はしていた、けど……。
拒絶されたみたいで、どうしようもなく苦しい。
やっぱり真実なんて、伝えない方がよかったんだろうか。
でもそしたら……俺はどうやって、前に進めばいいの?
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