初恋をもう一度。【完】
Chapter5:初恋をもう一度

◆◆◆◆◆

逃げるように公園をあとにした。

わざわざ来てくれた理人くんを、置き去りにしてしまった。

でも、あのままあの場に彼と一緒にいられる気がしなかった。

だって……。


『鈴木湊人』くんが、もうこの世にいない?

身内が亡くなったと聞いた時、確かに、もしかしたら兄弟かも、とは思ったけれど……。

それがまさか、わたしがよく知ってる鈴木湊人くんだなんて、思うわけもない。

だって湊人くんと話していると思い込んでいたのだから。

6年前の夏、最後に見た湊人くんの笑顔。

忘れない、忘れられない。

わたしはその笑顔が大好きだったから。

たとえもう会えなくても、どこかで幸せに笑っていてほしかったのに。

「俺は奈々ちゃんがいいな」

あの日の放課後に、男子達の前でそう言ってくれたこと、すごく嬉しかったのに。

湊人くんが亡くなった。

もう二度と会うこともできない。

それはとてもショックで、でも何もリアルじゃなくて、全然うまく理解できない。

だってわたしは、さっきまで『鈴木湊人』くんと一緒にいたと思ってたんだもの。

そう思い込んでいたんだもの。
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