初恋をもう一度。【完】

そして、湊人くんの死と同じくらい衝撃的だった、6年前の真実。

まさか『鈴木くん』が2人いたなんて。

鈴木湊人くんだと思っていた目の前の彼が、違う人物だったなんて。

そんな事実、自分の中でどう消化したらいいのか全然わからない。

理人くんが嘘をついていたことに、怒りなんてない。

そもそもは、わたしが勝手に勘違いしたのだ。

けれど……。

彼が言いかけた言葉を、わたしは遮った。

いちばん欲しかった言葉を、わたしには聞く勇気がなかった。

だって、彼が湊人くんじゃないという事実も、湊人くんの死も、わたしはまだ、うまく受け止められない。

夜風が凍るように冷たくて、思わず身を縮めた。

さっきは『鈴木くん』と手を繋いで歩いた道。

寒いのに幸せで心がポカポカしていた夜道。


ねえ、『鈴木くん』って誰?

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