初恋をもう一度。【完】
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「また連絡するね」と言った奈々ちゃんから、連絡は一向に来ない。
連絡が来ないまま大みそかが来て、年が明けた。
俺の家は喪中で、すごく静かな新年を迎えた。
兄貴がもしこれを見たら、「こういう湿っぽいのは苦手なんだけど」って言うんだろう。
だって兄貴は、俺とそっくりだから。
正月休み、実家にいてなにもすることがなかった俺は、ずっとスマホを握りしめてゴロゴロしていた。
何回もメッセージを送りそうになっては、その度に溜息をついてアプリを閉じた。
ただひたすら、連絡を待つしかない。
はあ……また溜息が漏れた。
けど大丈夫、彼女は絶対に連絡をくれる。
だって、俺が好きになった奈々ちゃんは、そういう子だから。
でも、奈々ちゃんがどういう結論を出すのかは、全くわからなかった。
嘘をついた俺を嫌いになったかもしれない。
もしそうだとしても仕方ない。
だって自業自得だ。
俺は彼女を、2度も騙したんだから。
……だとしても。
もう一度でいいから会いたい。
会って、ちゃんと言葉で伝えたい。
6年前に飲み込んだ言葉を、この間、言えなかった言葉を。
「好きだよ」
メッセージを入力して、送信ボタンの代わりに削除ボタンを押した。
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