初恋をもう一度。【完】

恩田くんが、湊人くんの訃報を話題に上げた。

彼は湊人くんと幼馴染でとても仲がよかったから、お葬式にも出たらしい。

恩田くんの口から聞く湊人くんの死は、肉親の理人くんから聞いた時よりも、何故かとてもリアルに感じた。

湊人くんの死というものを、やっと現実として受け入れられる気がした。


湊人くんのこと、本当に大好きだった。

目が合った時のことも忘れない。

ほんの少ししか交わしていない会話も、全部忘れない。

最後にくれた笑顔を忘れない。

ありがとう、さようなら。

わたしの大好きな、初恋の人──。


湊人くんの死を知っている人はとても少なくて、話を聞いて、みんなショックを受けていた。

松田さんなんか、その場で泣き出してしまった。

「……すずちゃん、あの頃鈴木くんのこと好きだったらしいよ」

有希ちゃんがこっそり耳打ちしてくれた。

同じ痛みを共有した気がして、あの頃苦手だった松田さんのことが、少し好きになった。

こうやってまた同級生が集まった時、その中の誰かが亡くなったという話題は、この先年を取れば取るほど、どんどん増えていくのだろう。

たとえ何度経験しても、いくつ年を取っても、別れという痛みや淋しさには、わたしはきっと慣れない。

そんなもの、慣れたくもない。
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