初恋をもう一度。【完】
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奈々ちゃんから連絡が来たのは、大学が始まってしばらく経ってから。
1月の下旬だった。
学校とバイトを終えて家に帰ってきた頃、メッセージじゃなく、突然電話が鳴った。
「……もしもし」
『理人くん?』
声を聴いた瞬間に、なんだか泣きそうになった。
連絡が来て安心したからなのか、それともこみ上げてきた愛しさのせいなのか。
よくわからなかった。
「奈々ちゃん……」
『あのね、今から会いたいんだけど』
「うん」
『東京駅にいるから、迎えに来てくれる?』
「東京駅!?」
『うん』
「……すぐ行く! 30分、ううん、20分で行くから待ってて」
俺は上着を着るのも忘れて、外に飛び出した。
奈々ちゃん、今度こそ俺は、ちゃんと『鈴木理人』で会うから。
俺の気持ち、ちゃんと伝えるから。
だから俺と、初恋をもう一度、初めからやり直してほしいんだ。