初恋をもう一度。【完】

「わたし、理人くんにどうしても伝えたいことがあるの」

奈々ちゃんは、涙のたまったその目で、真っ直ぐに俺を見て言った。

「わたしね、あなたのお兄さん、湊人くんのことが、本当に大好きでした」

「うん」

「……でもね、わたしは理人くんのことも大好きだったの。ピアノを弾いてくれた理人くん、教室で笑ってる湊人くん、わたしにとっては、2人合わせて『鈴木くん』っていう初恋の人」

奈々ちゃんの瞳から、溜まっていた涙がぽろっとこぼれ落ちる。

「湊人くんのことは忘れない。理人くんとの思い出も。……だけど、わたしが今好きなのは『鈴木くん』じゃない」

「…………うん」

「わたしが今好きなのは、毎日メッセージをくれた、クリスマスに会いに来てくれた、今わたしの目の前にいるあなたなの」

「……奈々ちゃん」

「理人くん、あなたのことが大好きです。だから、だからあなたと……今度はちゃんと理人くんと、もう一度、初恋をやり直したいな」

涙を流しながら笑って言った彼女を、俺はぎゅうっと抱き締めた。

「……俺も、奈々ちゃんに伝えたいことがあるんだ」

「……うん、聞かせて?」

6年前に言えなかった、あの言葉の続き。

「好きだよ」

「………うんっ……」

やっと俺は、俺の言葉として伝えることができた。

「だから、もう一度、俺と恋をしてください」

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