初恋をもう一度。【完】
「わたしにとって、湊人くんと理人くんは、どちらも大好きな、わたしの初恋の人でした。素敵な思い出をありがとう」
「まあ、俺が奈々ちゃんを幸せにするから、兄貴は安心して眠って……」
そこまで言って、理人くんは首を振った。
「いや、奈々ちゃんのおばあちゃんがそっちにいるからさ、ピアノ弾いてあげてよ。ピアノ大好きなんだって」
「そうだね、ぜひそうしてあげて。あ、できたら……きらきら星変奏曲がいいかな」
「なんで? おばあちゃん、モーツァルト好き?」
「ううん、きらきら星が好きなの」
もしも天国があるのなら、そこにピアノがあるのなら、本当にそうしてくれたら嬉しい。
「来世も、また兄貴と兄弟がいいな」
「わたしも、またあなたに会いたい」
いつか生まれ変わって、またあなたに出会えたら、わたしはもう一度、あなたに初めての恋をしよう。
その時は今度こそ、ピアノを聴かせてね。
だから、それまで。
さようなら、わたしの初恋の人──。
わたしは、隣で微笑む愛しい彼の手を、もう1人の初恋の人の手を、もう絶対に離さないようにぎゅっと強く握った。
~END~
この物語を、大好きだった祖母に捧げます。