初恋をもう一度。【完】
わたしは確かにピアノを弾くけれど、それは完全な趣味だった。
幼稚園の頃、先生が弾いていたピアノに興味を持ち、見よう見まねで弾き始めたら、それを知った両親が小学校に上がる時に電子ピアノを買ってくれた。
確かにそれ以来、毎日のようにピアノを弾いて過ごしている。
でも、ピアノ教室には通ったことがないし、実は楽譜を読むのが苦手だから、耳で聴いて適当に弾いているだけ。
楽譜を見ることもあるけれど、♯や♭が五線譜に3つ以上あったら、もうギブアップ。
だから、わたしなんて、人前で弾いていいレベルじゃないのだ。
ましてや、クラスの代表で伴奏なんて……。
断ればよかったけれど、気の弱いわたしは、目立つことよりも断るということの方が、尚更苦手だった。
とにかく、松田さんのせい。
わたしがピアノを弾くという、そう知られていないはずの話を、松田さんがどうして知っているのは知らないけれど。
本当に最悪だ、登校拒否したいくらい。