初恋をもう一度。【完】
「…ねえ、なんかクラスの女子の話してない?」
有希ちゃんが小声で言った。
「誰が一番可愛いみたいな話かなあ」
「たぶんそうだね。……なんか、入りづらいね」
またあとにしようか、なんて言っていたら、
「湊人は? 誰がいいの?」
そんな声が聞こえて、思わず息を飲んだ。
鈴木くんがそこにいるの!?
「俺? 俺は……」
ああ、確かにこの声は、間違いなく鈴木くんだ…。
いやだ、聞きたくない。
鈴木くんがいいと思う女子の名前なんて、全然聞きたくないよ。
わたしは、この間の「俺、奈々ちゃんが……」の言葉の続きを、もう少し夢見ていたい。
真実なんて、他の子の名前なんて、本当に聞きたくない。
聞いてしまう前にこの場から立ち去ろうと、慌てて踵を返そうとした所で、
「俺、奈々ちゃんがいいな」
鈴木くんがそう言ったから、わたしはその場でフリーズした。
聞き違い? ううん、確かに今「奈々ちゃん」って言った。
うちのクラスに「奈々」はわたししかいない。