初恋をもう一度。【完】
鈴木くんが転校する──。
その事実を知っても、わたしは毎日変わらずに過ごした。
だって、わたしに何ができる?
そんなのもう、どうしようもない。
わたし達は相変わらず、クラスで言葉を交わすことは殆どなくて、わたしはただ、鈴木くんの姿を目で追っているだけだった。
たまに目が合ってしまう時があって、すると鈴木くんはほんの少しだけ微笑む。
そんなことは今までなかったのに。
それとも、わたしが気づいていなかっただけ?
鈴木くんと目が合うたび、笑顔を見るたび。
切なくて、胸が苦しくなった。
本当は話がしたい。
けれど、何を言えばいいかわからない。
わたしを好きって本当?
転校するって本当?
それを訊いて、どうするのだろう。
あなたのことが好きです。
それを伝えても、鈴木くんはいなくなる。
もう好きでいても仕方ないのに、わたしの瞳は今日も鈴木くんばかりを映す。
どうしたら、好きじゃなくなるの?
苦しい。
こんな気持ちになるなら、恋なんてしたくなかった。