初恋をもう一度。【完】
「ねえ、鈴木くん」
「ん?」
「……転校、しちゃうんだよね?」
これを訊いたって、本当に意味なんてない。
今さらどうにもならない。
なのに訊いてしまった。
どこかで、否定してくれるのを期待していたのかもしれない。
わたしの問いに、鈴木くんはとても驚いた顔をした。
「……知ってたんだ?」
「うん」
「…………そっか」
鈴木くんは、少し淋しそうな笑顔を向けた。
「……どこに引っ越すの?」
「東京だって」
「……東京なら、わりと近いね」
わたしが言うと、鈴木くんは首を横に振った。
「遠いよ。だって、奈々ちゃんに会えなくなる」
「……鈴木くん」
わたしだって、鈴木くんに会えなくなるのは嫌だ。
でも、それを言葉にすることはできなかった。
言ったらきっと泣いてしまうから。