初恋をもう一度。【完】

今日は1学期の終業式。

明日からは夏休みで、どうせ部活で学校に行くというのに、1年前の今日はやけにテンションが上がった。

でも今年は違う。

だって今日は、鈴木くんに会える最後の日だ。

明日からはもう会えない。

1週間前に第2音楽室で会って以来、鈴木くんとは話をしていない。

鈴木くんはいつも通りみんなに囲まれて笑っていて、わたしもいつも通り、それをぼんやりと眺めていた。

「ごめんね」

あの日、鈴木くんは去り際にそう言った。

何に対する「ごめん」なのだろう。

転校してしまうこと?

謝るくらいなら、行かないでほしい。

それとも、「ごめん」は何か他のことに対してなのだろうか。

特に何も思い当たらない。

それに結局、鈴木くんは、わたしのことをどう思っていたのだろうか。

『俺、奈々ちゃんが……』

肝心なことは何も言ってくれないまま、わたしの初恋の人は、今日わたしの前からいなくなる。
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