初恋をもう一度。【完】

式辞というのは毎度代わり映えもしない。

合唱コンクールを振り返って、勉強の話をして、夏休みは事故0非行0で過ごしましょう、みたいな話で終わる。

言い回しが少し難しくなっただけで、小学校の時に言われていたことと変わらない。

立っている時間が長いから、貧血を起こしやすいわたしはいつも緊張してしまう。

終業式が終わって教室に戻ったら、通知表を配られるという憂鬱なイベントが待っていた。

成績は別に悪くないけれど、完璧な通知表をもらえる訳ではないから、家に帰れば多少の小言をもらうのだ。

通知表を配られたあと、担任の宮田先生から、終業式の式辞とあまり変わらない話があった。

でも終業式と違って席に座って聞けるから、わたしは不安にならなくて済む。

それから宮田先生は「みなさんに大事なお話があります」と言った。

「ちょっと淋しいお知らせですが、鈴木湊人くんが2学期から東京の学校に転校することになりました。……鈴木くん、前に出て」

先生に呼ばれて、鈴木くんは教壇の横に立った。
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