初恋をもう一度。【完】
もっと一緒にいたかった。
もっとたくさん話したかった。
鈴木くんのピアノ、もっと聴きたかった。
もっともっと、鈴木くんのことが知りたかった。
……でも、もう終わり。
どうしようもない。
鈴木くんとはもう会えない。
『会えない』ってどういうことなのだろう?
今まで、会いたい誰かに会えなくなったことがないから、想像がつかなかった。
すごく悲しいようで、でもピンと来ない。
正しく実感できない。
初めての恋なのに、こんな終り方あんまりだ。
泣きたい気持ちを我慢しながら、帰り支度を済ませた。
鈴木くんはまだ席に座っていて、男子達に囲まれて笑っている。
きっと最後のお別れをしているのだろう。
今教室から出たら、もう二度と会えない。
……帰りたくない。
わたしの視界の中に、ずっといてほしい。
でも──。