初恋をもう一度。【完】
じゃあね、鈴木くん。
本当に大好きでした。
わたしは心の中で呟いて、そっと席を立つ。
けれど、教室を出ようとした時、
「田さ………な、奈々ちゃん!」
そんな声に呼び止められ、わたしは驚いて振り向いた。
だって、今の声は!
席でみんなに囲まれていた鈴木くんが、立ち上がってこちらを見ていた。
「えーっと…… あの…………またね!」
少し口ごもったあと、赤い顔をして、でも満面の笑みでそう言った。
「……鈴木くん」
呼んでくれた。
教室で初めて、最初で最後だけれど、「奈々ちゃん」って呼んでくれた。
「……うん! またね」
わたしはそう返すと、溢れそうになる涙を堪えながら、教室を出ていった。