初恋をもう一度。【完】

名前を呼んでくれたことが嬉しかった。

最後に声をかけてくれたことが嬉しかった。

「またね」って言われたことがとても嬉しくて、けれどそれはお別れの言葉だから、すごく悲しかった。

……本当に、明日から、鈴木くんに会えないのだろうか。

夏休みが終わった2学期、登校してみたら、教室に鈴木くんが普通にいたりしないのだろうか。

急に引っ越しがなくなったとか、そんなことは起きないのだろうか。

半年くらい経った頃、ひょっこり戻ってきたりしないのだろうか。

そんなあり得もしないことを考えながら、わたしは涙ぐんでしまった目を擦りながら、廊下をとぼとぼと歩いた。

こんなに足取りが重いのは、きっと生まれて初めてだ。
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