初恋をもう一度。【完】
昇降口に着いて、深い溜め息をつきながら、「田崎」という名札のついた自分の下駄箱を開ける。
すると、わたしの靴の上に、何か身に覚えのないものが乗っていた。
教科書くらいの大きさの紙袋だった。
アイボリー色をしていて、五線譜のイラストが入っている、とても可愛らしい袋。
なんだろう。
朝登校した時には、こんな袋は勿論入っていなかったなあ。
首を傾げながらその袋を取り出した。
紙袋に封はされていなかったので、そっと中を覗いてみると、薄っぺらな四角いケースが入っていた。
これは……ディスクケース?
袋の中から取り出してみる。
どうやらこれは、CD-Rのようだ。
CD-Rの表面には、『奈々ちゃんへ』という文字が直接書き込まれていた。
わたしへの、プレゼント?
でもいったい誰が?
それに今日は、わたしの誕生日でもなんでもない。
袋の中身はこれだけで、他にはなにも入っていなかった。