初恋をもう一度。【完】
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…………。
少しの沈黙のあと、鳴り始めたのはピアノの音。
──ああ。
その音色ですぐにわかった。
これは、鈴木くんのピアノだ。
いつの間に……?
でも、そんなことはどうでもいい。
彼からのプレゼントは、サティの「ジュ・トゥ・ヴ」だった。
あなたが大好き、君が欲しい、と訳される、とても美しいワルツ。
あなたが大好き。
……わたしも。
わたしも鈴木くんが大好きです。
胸がじーんと熱くなって、でもそれは、すぐに痛みに変わっていく。
「柔らかくて、いい音だねえ」
そう言ったおばあちゃんのお腹に、わたしは抱きついて顔を埋めた。
「……奈々、なんかあったんけ?」
「…………おばあちゃんっ……す、鈴木くんがっ……ひっ……く………すず、き……くん……うわぁぁぁん」
切なくて苦しくて。
どうしようもなく悲しくて。
おばあちゃんに頭を撫でられながら、わたしはまるで子供のように、声を上げてわんわん泣いた。
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