初恋をもう一度。【完】

◆◆◆◆◆

さむっ……。

早朝の栃木駅のホームで、わたしは手を擦り合わせながら身震いしていた。

朝少し寝坊して慌てて家を出たら、マフラーと手袋を忘れてしまったのだ。

もう12月、寒いのは当たり前だけれど、今日は特に冷え込みが強い。

何故ホームが室内じゃないのだろう。

雨や雪は屋根で防げるけれど、寒さは凌げない。

栃木なんてそこそこ北にあるから、寒いに決まっている。

もう少し防寒対策したらいいのに、なんて自分が防寒し忘れたことは棚に上げて、頼りない屋根を忌々しく見上げる。

寒いなあ、早く電車来ないかなあ……。

鼻や耳まで痛くなってきた頃、やっと電車がホームに入ってきて、逃げ込むように乗り込んだ。
< 71 / 210 >

この作品をシェア

pagetop