初恋をもう一度。【完】
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「お先に失礼します」
「お疲れ様~」
カウンター内の店長にぺこりと会釈をして、わたしはバイト先である佐藤書店を後にした。
子供の時からこの町にある小さな書店で、実は同級生である有希ちゃんの家だ。
うちからは徒歩10分くらい。
わたしが中学生の頃まではいつも有希ちゃんのおじいさんが店にいたけれど、今は彼女のお父さんが店長をしている。
一昨年の春、おじいさんが亡くなったことを、わたしは母から聞いた。
有希ちゃんとは高校が別になってからすっかり疎遠になってしまったのだ。
わたしは高校も徒歩圏内、彼女は電車で宇都宮まで通っていて、顔を合わせる機会はほとんどなかったから。
そして今も、有希ちゃんは群馬の高崎の方で一人暮らしをしているらしくて、相変わらず疎遠なままだ。
少し寂しいけれど、きっと、環境が変わるとそういうものなのだ。
出会いがあって、その分だけ別れがある。
佐藤のおじいさんは、わたしが遊びに行くとたまに飴をくれる、優しい笑顔の人だった。
もうこの世のどこにもいないと思ったら、無性に泣きたくなったのを覚えている。
でも、人は永遠に生きられるわけじゃない、老いには逆らえないのだ。
わたしの祖母も、多分もう長くない。