初恋をもう一度。【完】
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栃木県の公立高校の大半は、何故か男子校と女子高に別れていて、共学の方が珍しい。
わたしが進学した高校も女子高で、だから男子と知り合うのは学校の外でだけ。
せっかく鈴木くんに恋を教えてもらったのに、何の出会いもないわたしは、好きな人すらいないまま高校生活を送っていた。
でも、高校2年生の秋。
ついに、人生初めての彼氏ができた。
同じ栃木市内にある男子校の人で、名前は晃太《こうた》くん。
彼は数人でうちの高校の文化祭に遊びに来ていて、クラスメイトの麻衣《まい》ちゃんから紹介されて知り合った。
晃太くんは、麻衣ちゃんの中学の同級生だ。
「奈々ちゃん、よろしくね」
笑った顔がなんとなく、鈴木くんに似てるなと思った。
そのせいか、『奈々ちゃん』と呼ばれてドキッとした。
鈴木くんのことは初恋の思い出にした筈なのに、そんな自分に少し呆れた。
彼はもういないのに。
わたしはまだ、あそこで立ち止まるの?
「よかったら少し一緒に回らない?」
そう誘われて、素直に頷いた。
話してみたら、晃太くんは鈴木くんとは全然違っていて、でもとても魅力的な人だった。