初恋をもう一度。【完】
──けれど。
大学受験が近づくにつれ、わたしと晃太くんは少しずつすれ違い始めた。
きっかけは、進路だった。
晃太くんは東大を受験する。
彼が通う男子校は、毎年何人も東大合格者を出す進学校なのだ。
わたしも恐らく都内の大学を受けると、以前から彼に話していた。
しかし、夏休みの終わり頃、祖母が老人ホームに入ることが決まって、わたしの気持ちは大きく揺らいだ。
わたしは薬学部志望で、でも国立の薬学部は難しくて入れないから、私立を受験するつもりだ。
学費だけでもとんでもないお金がかかるのに、その上都内で一人暮らし……。
老人ホームが安くないことは知っている。
家にこれ以上負担をかけるのは嫌だった。
わたしは晃太くんに事情を話し、「家から通える所にする」と告げた。
晃太くんは「うん、わかった」と頷いた。
「……ま、会えないほど遠いわけじゃないし」
「うん、そうだよね」