初恋をもう一度。【完】

大学生になってお付き合いをしたマサくんは、晃太くん以上に鈴木くんに似ている人だった。

似ているものは似ているし、鈴木くんを忘れることはできないから、どうしようもないのだけれど。

晃太くんと付き合っている間、わたしはちゃんと彼自身のことが好きだった。

鈴木くんのことは今度こそ思い出になっていた。

けれど晃太くんと別れたら、すぐに思い出の蓋が開いてしまったのだ。

鈴木くんに対する想いは、好きという気持ちではないのかもしれない。

でも、マサくんに初めて会った時、鈴木くんのことを思い出して会いたくてたまらなくなった。

わたしの初恋の人は、いつになってもわたしを解放してくれない。

もしも鈴木くんと再会できたら、この気持ちにも踏ん切りがつくのだろうか。

マサくんはわたしと同じく佐藤書店でバイトしていて、3つ歳上、他の大学に通っていた。

明るくて、サッカーが好きで、ふにゃっと目尻に皺を作って笑う人。

その笑顔を、すごく好きだなあと思った。

マサくんにどうしようもなく惹かれて、でもその理由を考えないようにした。
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