初恋をもう一度。【完】
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祖母が亡くなったのは、クリスマスの10日前だった。
肺炎になって、そこから少しだけ回復の兆しが見えた、その翌日のことだった。
わたしはちょうどテスト期間で朝から学校に行っていて、夕方、帰ろうとした時に知らせを受けた。
母から電話で告げられた時、わたしは「そっか」としか言えなかった。
なんだか実感がなかったからだ。
まるで他人事のようにその報告を聞いた。
それは祖母と対面しても同じだった。
あまりにも綺麗な顔で棺に横たわっているから、眠っているようにしか見えなかった。
「いい写真でしょ?」
「いい笑顔してるよね」
母と母の姉が、祖母の遺影について話しているのが聞こえて、胸がもやもやした。
写真なんて、なんの意味があるのだろう。
祖母はもう、こんな顔で笑ってくれることなど二度とない。
でもそれは頭ではわかっていても、まるで実感は沸いてこなかった。
またいつもの土曜日、老人ホームに行けば、車椅子に座った「さくらさん」が笑っている気がしてしまうのだ。
鈴木くんが転校する時もそうだった。
誰かにもう会えないという事実を、わたしの心はいつも、現実としてなかなかうまく受け入れてくれない。