初恋をもう一度。【完】

お通夜の時も、告別式の最中も、わたしはただぼんやりお経を聞いているだけだった。

母や叔母、いとこ達がぐすぐすと鼻を啜るのを、やっぱり他人事のように見ていた。

まるでお葬式の映画を観ているみたいで。

だって、おばあちゃんに二度と会えないなんて、全然意味がわからない。


わたしが祖母の死をようやく現実として認識したのは、火葬場に行って、いよいよ祖母の肉体がこの世から消えてしまうという時だった。

急に震えるほど怖くなった。

……怖い? 何が怖かったのだろう。

「おばあちゃん! おばあちゃん、やだよ!!」

何度も何度も泣き叫びながら、棺に泣きついた。


人はいつか必ず死ぬ。

祖母は80年近く生きて、天寿を全うした。

初孫のわたしにとびきり優しかった、大好きなおばあちゃん。

かけるべき言葉はきっと、「ありがとう」や「お疲れ様」なのだ。

そんなことは、頭ではわかっている。

死者を悼むという感情は、とてもエゴイスティックだ。

弔いなんて、死者のための儀式ではない。

けれど、この世で一番、純粋な愛に溢れている儀式なのかもしれない。

わたしは、おばあちゃんがいなくなって、本当に悲しい。
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