初恋をもう一度。【完】
……ああ、そうだ。
この楽譜を買ってもらった時、鈴木くんにばったり会ったんだっけ。
弾いている内に、ふとそんなことを思い出した。
懐かしいな。
そういえば終業式の日、鈴木くんのサティを聴きながら号泣したわたしを、祖母はずっとずっと撫でてくれた。
「大丈夫、また会えるさ」
あの時、ようやく泣き止んだわたしに、祖母はそう言って笑った。
パヴァーヌのゆったりと美しい四拍子は、どこかしら祖母のきらきら星のようで、とても切ない気持ちになる。
大好きな祖母には、もう会えない。
でも……鈴木くんには会える。
『会えるうちに会った方がいいよ』
会えるうちに、二度と会えなくなる前に。
「今すぐ会いたい」
パヴァーヌを弾き終えたわたしは、傍らのスマホを手に取り、鈴木くんにメッセージを送った。