初恋をもう一度。【完】
翌朝、目を覚ますと、いつも通り鈴木くんからメッセージが届いていた。
開いてみると、サンタ服を着た猫の可愛らしいスタンプだった。
「おはよう。今日ってクリスマスイブだっけ?」
『そうだよ。もしかして忘れてた?』
「うん、忘れてた (笑)」
祖母の死やらテストやレポートやらで、すっかり忘れていたのだ。
『今日はなにして過ごすの?』
「お昼から夕方までバイト。鈴木くんは?」
『俺も夕方までバイトだよ』
「お互い色気ないね」
わたし達はお互い、恋人の有無を相手に尋ねたことはなかった。
でも、わたしはいないことをさりげなくアピールしていたし、それは彼もなんとなく同じだった。
『イブなのにな。奈々ちゃん、バイト終わったらなにするの?』
「えー、家でゴロゴロ?」
『俺もおなじ笑』
イブの夜、一緒に過ごせたらどんなにいいか。
じゃあ、一緒に過ごそうか?
わたし達は恋人ではないから、その一言には繋がらない。
その距離がもどかしくて仕方ない。