僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
親父はあたしの顔をじっと見ている。

眼光鋭く眉間に皺を寄せた顔は、あたしの知っている親父の顔ではなかった。

親父の佇まいから溢れる、ただならぬ威厳に背筋が思わずピンと伸びた。

これが我孫子会連合総長の顔なのかと思った。

「悠斗かーーあれは賢い男だ。盃を請ける時に全て察していた」

「……悠斗はなんて」

あたしは親父から目をそらさず、身を乗り出した。

「凛子。あれは信用できる男だ」

「だーかーらー悠斗は夫婦の話、承諾してるのかよ」

「おお! 『総長が仰るなら』と」

「皆まで言わせるなよ」

「おめえこそ、察しねえか。全く鈍いんだよ、おめえは」

「はあ、『あれは賢い男だ』で、解るかよ」

あたしはさらに身を乗り出し、膝を立て、拳を握りしめた。

「凛子、落ち着け。ここを何処だと思っている?」

あたしはハッとして、姿勢を正した。
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