僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
「はぁ~」

ダメだこりゃと思うと気が抜けて、溜め息が漏れた。

諦めて廊下を引き返し、自分の部屋の前まで戻ると「ガタン」と遠くで物音がした。

ビクッと体が跳ね音のした方に、目を向けた。

そろりそろり、廊下を歩く。

恐らく、あたしはへっぴり腰になっているだろうと思いながら、泥棒でも入ってきたのではないかと不安でたまらなかった。

灯りのない暗い廊下に、ヒタヒタと足音と共に白浮きした手と顔が近づいてくる。

背筋がぞくぞくした。

ひーーーっと声を上げそうなのをこらえ、暗がりに目を凝らす。

「まだ起きていたのか?」

ぼんやりと顔が確認できるくらいの距離で、聞き覚えのある声がした。

ーー悠斗?

「早く休めよ。読経の時間に寝過ごすぞ」

「は……悠斗こそ」

悠斗はスーツ姿だった。

仄かに香水の匂いに混じり、酒の匂いがした。

「悠斗、飲んでるのか?」
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