僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
「凛子。餌、やっといて。組から呼び出しがあった」

先ほどまで袈裟をかけていた悠斗がスーツ姿だ。

実を言えば、あたしはスーツ姿の悠斗の方が好きだ。

悠斗の無駄な肉がない、スリムな体型がよくわかるからだ。

悠斗はとくに筋トレしているわけでもなく、ジム通いをしているわけでも、食事に気をつけている風でもない。

なのに悠斗は均整のとれた身体つきをしていて、気を抜くと直ぐ、体型に現れてしまうあたしは羨ましいかぎりだ。

朝から組への呼び出し、親父の護衛でもするのだろう。

ずいぶん、気に入られたものだ。

悠斗の名は松尾組との1件で一躍、我孫子会だけでなく、関東一円の極道に知れ渡ったと、金守に聞いている。

あの1件以来。

悠斗を護衛に連れているだけで、威嚇になるのだと。
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