僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
なにより、悠斗は我孫子会傘下の組の姐さんたちに受けがいいそうだ。

悠斗の柔らかい物腰や甘いマスク、そして悠斗が家事に詳しいことや、冠婚葬祭のマナーに詳しいことも人気の理由だと言う。

悠斗効果で何かと牽制しあっていた女将同士が仲良くなってきたそうだ。

何だか複雑な気持ちだ。

悠斗はあたしの婚約者なのに。

この日は結局、悠斗は昼過ぎまで神社に帰ってこなかった。

姐さん同士の中継ぎという名目で、家に女将たちが寄り合い、悠斗が手作り味噌の講習を行ったという。

悠斗は毎年、秋に麦糀と米糀を合わせた味噌を作り、有力な檀家宅に配っている。

我が家の味噌汁は悠斗が作る味噌の味だ。

数日前、おふくろが大量の麦糀と米糀に大豆、塩を仕入れていたのは味噌講習のためだったのかと、納得した。

仕込んだ味噌は組の若い衆が手分けをして運んだとのことだ。
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