僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
そのうち、糠漬け講習も行われるかもしれないと思うと、笑えなかった。

念のため、悠斗に「糠漬けは作っているか」と訊いてみた。

「美味しい漬け物は試してみたいが、糠漬け臭くなりたくないな」

悠斗は顔をしかめた。

ホッとした。

糠漬けをかき回し忘れて喧嘩、なんてことにならないと思った。

「糠漬け食べたいのか? 好きだというなら作らなくもないが」

悠斗はあたしの顔を覗きこんだ。

「いや、いい。漬け物はあまり好きじゃない」

あたしはぶんぶんと首を振って否定した。

「凛子。修行、いつまでするつもりだ」

茶道の稽古の後。

悠斗があたしに言った。

「もうじゅうぶんだろ。朝から晩まで神社の作法に縛られて、退屈だろう」

「あたしは別に」

「稽古なら、いつでもつけてやるぞ」
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