僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
俺はズルい人間だ。

優等生だと言われたるたび、胸がチクリと痛む。

組に出入りするようになって数ヶ月。

蜷川常務と歌舞伎町の本店、鍵のかかった個室でシノギについて話していた時だ。

開店して小1時間が過ぎようとしている頃だった。

個室のドアをけたたましく叩く音がした。

俺がサッと席を立ち、ドアの鍵を開けると店長が真っ青な顔で、俺を押し退け入ってきた。

「オーナー! 大変です。ホストの1人がいきなり暴れ出して、手がつけられません」

店長は俺のことなど眼中にないのか、蜷川常務に半泣きで訴えた。

「酔っていやがるのか」

蜷川常務はソファーに座ったまま、顔も上げずに訊ねた。

「酔うほど飲んではいないと思いますが」

店長はドアの外と蜷川常務の顔を何度も、交互に窺っている。
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