僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋

店長が情けない声を上げ、小走りでソファーの影に隠れた。

ったく、あれで店長かよ

思わず、口に出た。

そもそも、いきなり暴れだしたってどういう状況だ。

何かきっかけとかなかったのか。

暴れているホストの元へ向かいながら、1つ思いあたる節があった。

ついさっきまで普通に話していた奴が、煙草を吸った途端、饒舌になったり怒り出したり喚き出したりするのを見たことがある。

もしかしたら、このホストもと思った。

眉を吊り上げ、呂律も回らなくなり、両手を振り回し叫んでいるホスト。

フロアーにいるホストも後退り、恐怖で嗚咽を漏らしている客もいる。

俺は暴れているホストの背後に回り込み、彼の左腕を掴み捻り上げた。

彼の右手からビールジョッキが滑り落ちた。

派手な破裂音が響き、ビールジョッキの砕けた破片が散らばる。
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