僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
俺は敢えて店長に、声をかけた。

ボサッとしている場合かよ、お前が仕切らなきゃ誰が仕切るんだと、はっきり言ってやりたかった。

俺は暴れた彼を従え、蜷川常務のいる個室に入った。

蜷川常務は目だけ動かし「片づいたか」と訊ねた。

「はい。オーナー」

俺は答えて蜷川常務に、事情を耳打ちした。

蜷川常務の目がギラついた。

「そこに座れ」

彼は蜷川常務に言われて、おずおずとソファーに座った。

「オーナー、救急箱を持ってきます」

こいつの処分は蜷川常務に任せたほうがいいと思った。

ヤクをやっているなら、尚更だ。

事務所に救急箱を取りにいったついでに、フロアーを覗いてみる。

客は大方帰ったようで、まばらにしか残っていない。

片づけをするグループと接待をするグループに分かれ、うまく対処しているようだ。
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