僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
ここは大丈夫だなと思い個室に戻ると、暴れたホストは項垂れて嗚咽していた。

「オーナー、手当てしてもよろしいですか」

「ああ、終わったらタクシー呼んで病院に連れて行け」

蜷川常務はそう言って黒皮の財布から万札を数枚取り出し、テーブルの上に置いた。

「ありがとうございます」

俺はお札を受け取り、スーツの内ポケットに仕舞い、応急処置を急いだ。

「ずいぶん、手馴れているな」

「スポーツをやっていましたので、このくらいは」

「そうか」

蜷川常務の顔に薄く笑みが零れた。

「行ってきます」

応急処置を済ませて、病院に向かう。

道中の車内で暴れたホストがポツリ、俺に訊ねた。

「ヒカルさん。高校の時、裏番はってましたよね?」

いきなり、こいつは何を言い出すのかと思いつつ、そのまま彼の言葉を待つ。
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