僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
「俺のダチが城蹊で、よく裏番の話をしてた」

俺は彼の話が当てずっぽうなのかどうか、確かめるため、さらにしばらく聞いた。

「耳の後ろにある赤い桜型の痣、チラッと見えたんだ。普段、隠れてるよな」

「……余計なことを」

俺がポツリ呟くと、彼の肩がピクリと動いた。

「『裏番は1人、身ひとつで乗りこんで片をつけてくる。耳の後ろに赤い桜型の痣が目印だ』って。和泉悠斗、あんただろ?」

「だとしたら?」

「俺は3ヶ月前まで松尾組傘下の梅川組に居た。松尾組が我孫子会連合の襲撃に失敗して潰れ、組はじり貧。そんな時、松尾組の襲撃をかわした奴の中に、赤い桜の痣の若い奴がいたという噂を聞いた」

「で。我孫子会のシマを見張っていれば、そいつが現れると踏んで」

「ああ」

「……我孫子に手引きした奴がいるな。誰だ? ヤクもそいつが?」

彼は急に、身を硬くして震え出した。
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